| 第102回 2月句会 披講(管理人選) |
| 1 | 霜柱昨夜の豆を押し上げる | 貞歩 |
| 「鬼は外」と撒いた豆が一夜明けると句のようになっていたのです。しっかりと表現しています。「豆撒きに戸の閉まる音付いてくる」これも豆撒きの実感のこもった句です。両句とも視点が大変しっかりしています。 |
| 2 | 水底のやうな夕暮れ春の雨 | 勇魚 |
| この感じ方は作者独特のものでしょう。私にはちょっと言い過ぎの感じは持ちますが、でも、こういう踏み込み、飛躍した表現は俳句の命でもあります。そう言う意味で評価は出来ます。「日脚伸ぶ広報無線のわらべ唄」田舎などにはよくありますね。出来ています。 |
| 3 | 原爆ドーム彎曲の骨は雪を着て | 山笑 |
| 原爆ドームに雪が積もっているのです。内容は根源的な句。ただ中七下五は「彎曲の鉄雪を被て」としたらどうかと思いました。でも良い句ですね。「編み掛けの子の手袋を遺し逝く」句は淡々と詠んでいますが、悲しみこれに極まれりです。弔句としてすばらしいです。 |
| 5 | 雛飾吾子の点火で仕上がりぬ | たくみ |
| 雛飾が出来上がった瞬間を捉えています。内容としては素晴らしいのですが「吾子」はあまり意味がないのと「点火」が漠然としています。例えば「行灯を点けて仕上がる雛飾」と言った感じ。よい句ですよ。「春の夜に触れた想ひも五十肩」ちょっと主情が先走っているかな〜。 |
| 7 | 探梅と書きてデスクの出てゆきぬ | 未来予想図 |
| ここでのデスクは、新聞社などで呼称される記者の責任者の事だと思います。まとめ役ですからデスクにいることが多いのですが、この日は掲句のような外出となったのでした。ここでの「探梅」むちゃくちゃ面白いですね。このデスクの人間性がわかるようで、納得させられた一句です。「スキーヤー倒れて姉と分かりけり」倒れたことで姿形と個性がでで、わかったのです。掲句と一緒でどちらも大変ユニークな句です、 |
| 8 | 梅ふふむ朝は好みのブラームス | よせふ |
| お庭の梅を見つつ、椅子に座ってコーヒーを嗜みながらブラームスを聴いているようなイメージが湧きます。作者の朝の日常なのかも知れません。「末吉の末とはいつぞ老の春」上五中七は理に走りすぎています。 |
| 11 | 俄か雪の雲は魚群の如膨れ | 織山 |
| 雪雲を「魚群の如」と捉えていますが、説得性には乏しい面は否めませんよ。「婚活は昔の世にも懸粧文」現代性とウイットに富んだ句でありますが、私は理屈が強いな、とは思っています。 |
| 12 | 外孫の帰る車や春の月 | 障子 |
| 去って行く車を見送っているのです。賑やかで楽しかった数日間が終わるのです。上五中七はもうちょっと何とかなりそうですが、気持ちは伝わって来ます。「積み上げし残雪の上子等渡る」「渡る」は何とかなりませんでしょうか。 |
| 16 | いちやうに背なに陽を当て寒雀 | 明彩 |
| 日向の地で何かを啄んでいる寒雀です。全体にもう少し引き締められそうな感じは受けています。でもきちんと見止めているところは立派です。「福豆を投げてもみたき小鬼かな」ちょっと理屈が先走っている印象。 |
| 20 | 砂時計の砂のもも色春隣り | ぴっぴ |
| 上五中七の視点はたいへん良いです。ただ季語が安易で気分的。もっとしっかりした季語はありそう。「樹木医の鞄に飴や日脚伸ぶ」面白い捉え方。いろいろ連想されてふくらみのある句です。 |
| 21 | 雪の朝人影もなく静かなり | 花猫 |
| ただ一面の雪景色なのです。一見平凡な句のようですが、惹かれるものがあります。「お葬式菜の花のそば君がいて」「君」は故人のことを言っているのだろうと想像します。 |
| 28 | 陽だまりに入学試験終へし子ら | はるを |
| やっと重圧から解放された子供達が屯しているのです。合格発表の不安を秘めながら、談笑しているのでしょう。「陽だまり」がいいですね。よい句です。「余寒なほ旅行鞄に鳥図鑑」季語は若干動きそうな。 |
| 29 | 福引や巴里も羅馬も金の玉 | 香帆 |
| パリかローマの旅行が、がらがら玉を出すこの福引きの特等賞なのです。福引は新年の季語ですが、あまりお目に掛かったことがありません。でもこの句は良いですよ。金の玉に夢がありますね。「紀元節国旗の箱に曾祖の名」ご一家の歴史を詠んでいます。これもよい句。 |
| 32 | つかの間の粉雪を追う声高に | 杏 |
| 雪国ではこんな光景はないのですが、雪が珍しい地域での子供達の行動でしょう。全体に漠然としている印象はあります。 |
| 34 | すき焼きの煮えて言葉のほぐれつつ | 花不果 |
| 煮えた鋤焼きの匂いに言葉も滑らかになったのです。ただ「ほぐれつつ」の「つつ」はここではちょっと不自然。「けり」とか「たり」など。もっと自然なのは「会話の弾みけり」なんて方向でしょうか。「黙々と箸だけ動く葱鮪かな」事実だったのでしょうが、葱鮪でなくてもいいかな〜。 |
| 39 | 享保雛歳月重く座し給ふ | 歩 |
| 中七は一見説明的ですが、こういわれると享保雛の色あせた召し物、古びた容姿が感じられます。知的表現をしていますが、出来ている句と思いました。ですが「天界を知らずロビーの飾り凧」までゆくと、理屈が先走った句となっています。 |
| 42 | 墨堤の風の存問梅開く | 朝歩 |
| 墨堤は隅田川の堤。句は思い切った表現をしています。問題は「存問」。意見は分かれるところですが、私には言い過ぎの感は否めないのです。「信念も理想も措きて山眠る」これも大胆な擬人化表現。これも私の俳句観からは、評価するには戸惑うものがあります。 |
| 44 | 畦を焼く火を目で追ひて長話 | 翌檜 |
| 会話のひとりは畦を焼いている農夫だと思われます。世間話に弾みながらも眼は火の行き方に神経を尖らせているのです。下五はもうちょっと何とかならないかとは思いますが、よい句であるのは間違いのないところです。「牧開きトラックで牛運び来る」いよいよ狭いところから牛は解放されるのです。 |
| 48 | 蒸鮓や蒸篭の湯気の天井まで | かさね |
| 料理関係の俳句は全く苦手なのですが、この句は疎い私でもイメージが湧いてきます。ここでの「や」には若干の違和感がありますが、出来ている句です「鵜の池を引鴨占拠陣を張る」複雑なことを言っていますがまだ整理は出来そう。 |
| 55 | 春の雪干したる池は薄化粧 | チクタク |
| 「干したる池」は一滴の水も無い事だと思います。一応は出来ています。問題は「薄化粧」。作者はそう掴み取ったのですが、第三者からみると、言い過ぎなのでは、と言う印象はあります。「百貨店春の商戦模様替え」報告調ですよ。 |
| 56 | 酒醤油砂糖に味醂眼張釣 | はる |
| 上五中七と眼張釣りとはどんな関わりがあるのでしょう。その場で眼張を料るためのものなのかな。私には分かりませんでした。「春待ちの風待港島哀史」風待港は帆船の頃の呼称と理解しました。よい言葉です。ただ句はちょっと漠然とし過ぎです。 |
| 59 | 決着は今や手袋脱ぎながら | 桂介 |
| 争い事、もめ事、或いは懸案事項の決着です。なかなか緊迫感のある内容ですね。ただ中七下五は何かもったりしています。私だったら「手袋を脱いで決着つけんとす」などとするところです。「試験日の間近に迫り湯気の音」最近は試験日で季語になるのかな〜。 |
| 60 | 紅白の幕に収まる枝垂梅 | 牛歩 |
| 野点などの梅の宴かも知れません。纏まってはいます。私だったら「紅白の幕を廻らし」等々「収まる」を一考してみるかも。「春耕の力漲る両手かな」力強さがあります。季語が生きていますね。 |
| 61 | 雲ひとつ無き初富士に合掌す | 弥生 |
| 晴れきった空に雪を被た富士を、それも年の初めに見たのです。思わず合掌した作者の気持ちは理解できます。素直に表現しています。「献選の餅を頂き病む友に」事実をきちんと纏めています。ちょっと報告的かな。「献選」は「献饌」でしょう。 |
| 64 | 春めくや土竜の土の又一つ | 良花 |
| 畦道に土の膨らんでいるのありますが、それを言っているのでしょう。余り良くはありませんが「春めくや土竜のあとの土もこり」などですと、はっきりすることになります。「小さき橋半身にかわし猫柳」中七が誰なのか、どういう状況なのか、わかりません。 |
| 68 | 歯ごたえも何処かにありて粥柱 | 純代 |
| 粥柱は粥に入っている餅のことで、正月15日に食します。上五中七の表現はまさしく粥柱を言い止めています。よい句と思いました。「茂吉忌や電子カルテの中の我」精神科医・斎藤茂吉も今の電子カルテをみたらさぞ驚くことでしょう。「中の我」はどうかな〜。 |
| 70 | 梅一輪かな文字淡き床の軸 | 淡雪 |
| 軸の仮名文字は薄墨で書かれているのでしょう。傍らに梅が活けられ一輪だけ咲いているところ。ちょっと舞台装置ができすぎの感はありますが、でも句はきちんと纏まっています。「霜柱掃く作務僧の素足かな」この句も出来ています。両句とも纏まりすぎの印象。 |
| 71 | 寒烏園の子供に急降下 | 鉾 |
| そこが鴉の縄張りで威嚇をしているのかも知れません。一種の危機感のある句です。「下萌えや五百羅漢のゆるむ笑み」「ゆるむ笑み」そのとおりなのでしょうね。でもちょっと平凡かな〜。 |
| 73 | 風呂ふきにとろりと味噌の流れたる | しゅん吉 |
| 又、リアルなところを。思わず生唾を飲み込んでしまいました。風呂吹き大根でこんなに具象的に言い切った句はあまりないかも知れません。これが俳句の基本形です。非常に良い句です。「神楽面外し幼き顔いづる」意外性を詠んでいます。これも出来ています。 |
| 74 | どこからも二月の波の見ゆる町 | あいるらんど |
| 傾斜地が町をなしているのでしょう。「二月の波」はどうでしょう。例えば「冬の大海」はお粗末としても、こんな方向です。「春禽とぶ地にある影の一枝より」一枝の影のある地面から飛びたったと言うことでしょうね。 |
| 79 | 春の夜や口誦なめらか汀女の句 | 妙 |
| 季語と汀女は悪くはありません。ただまだまだ整理は出来そう。例えば「春の夜を汀女の一句語り合ふ」と言った感じです。「待ち時間過ぎて陽炎何もなし」面白い捉え方なのですが「何もなし」が今ひとつわかりにくい。惜しい句です。 |
| 83 | 遠山のスキー場の灯揺らめけり | 信号青 |
| 夜間スキー場なのでしょう。大景を詠んでいます。ただ照明なので「揺らめけり」がよくわかりませんでした。「鯛焼きをつつむ両手の重さかな」「両手の重さ」は良いです。「つつむ」あたりはどうでもいいのです。 |
| 87 | 沈丁花母の遺品に硯と筆 | 軽騎兵 |
| 別に悪い句ではありません。季語も合っています。ただこれからの俳句はここからどうはいりこむかなのです。ここが難しいところ。「春一番湖に白帆と比良の雲」もっとよい季語がありそうにも。 |
| 92 | 重たさを肩にうつして雪の旅 | 翔子 |
| 重たさは雪のことでしょうか。或いは鞄の持ち方か。或いは心理的なものか。いずれにしてもそれをはっきり言う必要はありそうです。「虹はるか群れて固まる枇杷の花」中七下五で句が出来るような気がするのですが。 |
| 96 | 吾顔の映りしシャボン玉弾け | スバル |
| 膨らましている時貌が映ったのです。しかしそれは束の間、直ぐ弾けてしまったのです。私だったら「吾が顔を映して破裂石鹼玉」と言った作り方をするかも知れません。「石階を喘ぎ登れり寒桜」きちんと写生されています。 |
| 102 | 日脚伸ぶ女子寮門限十時です | 鉄腕アトム |
| 冷静に見たら夜の10時と日脚伸ぶは関わりは無いのです。でも何か面白さを感じさせる句ですね。言わば俳諧的捉え方。こういう句もよいと思います。「ショベルカーの爪の跡あり枯葦原」爪の跡とはどういうものかちょっと迷いました。開発の途上にあるのでしょうけれども。 |
| 106 | 萌え兆す園のさざめき湧くごとし | 荷香 |
| その庭園のあらゆる草木の芽吹きを抽象的に大づかみで表現しています。こういう把握の仕方は難しいのですが、消化している点立派です。ただ、句は「萌え兆す」で切れるのか、中七まで行くのか、そこが曖昧です。まだ整理は出来ますよ。「追儺鬼諭す菩薩のヅカ乙女」宝塚での節分の寸劇なのかな。 |
| 108 | 春立つや沖の小舟の黄金色 | 佳月 |
| 太陽光線で舟がそう見えるのでしょう。作者にはそう見えたのです。季語はもっと良いのがありそう。「摘草や溶けだしさうな白き月」昼の月を言っています。中七下五の捉え方はたいへん良いです。 |
| 109 | 駘蕩の七島霞む伊豆の海 | 匡 |
| 大景を詠むのはなかなか難しいのですが、この句はそれを乗り越えています。打ち出しの「駘蕩の」は良いですね。固有名詞も生きて、春風駘蕩の伊豆が感じられます。惹かれました。「凍て星や烏賊釣り船の明明と」明かりの対比です。まずまずと言うところかな。 |
| 114 | 臆病な犬ほど吼ゆる多喜二の忌 | 酒嫌い |
| 多喜二の思想と上五中七がどう関わっているか私には不案内ですが、句としては出来ていると思います。「満天のオーロラ背負ひ帰漁せり」海外詠でしょうか。すごい光景であろうと想像されます。 |
| 118 | 雪原を海に模したる青ライト | 灌木 |
| 札幌かは別として、雪祭りの一齣のような気がします。雪原が偶々海に見えたのではなく、ライトで作為的に作られたのでしょう。原句でもわかると思います。もし私だったら「雪原を青照明で海に模す」と言ったような形にするかも。「赤色のライトアップや燃える雪」これも同じところかな。「燃える雪」はどうでしょう。 |
| 121 | 寒天に裸の欅潔し | 貝母 |
| 季語が二つあります。これには若干気にはなりますが、作者は「寒天」も入れざるを得なかったのでしょう。「潔し」で欅の裸木の姿がイメージされますね。巧みな主観表現。「健やかに片手に余す年の豆」余った豆が歳の数だけあるのです。これも出来ています。 |
| 124 | 行列のキャッシュコーナー春浅し | 幹夫 |
| キャッシュコーナーは場所によっては、外にはみ出て並んでいる時がありますね。句は事実をそのまま述べています。これを詩に昇華するには、このままだったら季語に工夫はいるような。「横綱の一人去りたる二月哉」この句も事実を説明しているだけなのです。 |
| 125 | 大和路の旅の余寒に虚子思ふ | 旅人 |
| 大和路と虚子と言えば、先ず彼の短編小説「斑鳩物語」を思い浮かべます。又奈良を題材とした俳句も作っており、何度も訪れた地でもあります。作者はそのような歴史的事実を踏まえて「虚子思ふ」と言っているのです。ここでの「余寒」には惹かれました。たいへん良い句と思います。「春障子灯りて茶屋の街となる」艶っぽい句です。 |
| 131 | 梅野点茣蓙のでこぼこがまんして | 風華 |
| 敷いた茣蓙の下は更地ではなく土のでこぼこ、石ころなどがあるのです。いかにも、梅の咲いている場所の感じが受けます。「がまんして」が良いです。それが茶道の風雅でもあるのです。実在的なよい句と思います。「黒板塀簪ほどの梅のぞく」私には実感としては共感できませんでした。 |
| 135 | 寒卵プリンに生まれ変はる午後 | 眠兎 |
| 寒卵の特性がこの句にあるか、と問われば苦しいところですが、しかし楽しい句ですね〜。こういう句もあって良いと思います。「直立の杉弓なりに雪折れり」「直立」は敢えて言わなくとも。「雪載せて弓なりの杉折れ兆す」なんて感じです。 |
| 137 | 湯豆腐や昆布力を出し尽くし | 義久 |
| 出汁を取るための昆布です。湯豆腐を食べ終わったので昆布だけが鍋に残っているのです。「力を出し尽くし」は言い得て妙。「その人のマスクに淡き春の色」作者の感覚なのかもしれませんが、わかるようでわからない。 |
| 141 | カメラ手に節分草にひざまずき | 海山 |
| 節分草を撮ろうとしているのです。小さな節分草がでています。きちんと写生が出来ています。「節分草咲かせて女老いにけり」事実を述べているのでしょうね。でもそれだけかな。 |
| 142 | 吐く息が部屋にたゆたひ紙を漉く | 白梅 |
| 紙漉場は冷え切った場所ですから、ここでの「吐く息」は白息でしょう。それが直ぐ消えないのです。紙漉場の厳しい環境が想像される句です。「見守り隊学童通路に悴めり」「見守り隊」は交通事故、犯罪から児童を守るボランティアを言うのでしょう。ご苦労様ですね。 |
| 143 | 早春や筧あふれる水の音 | 木綿 |
| 早春らしい句です。一応はこれで良いですが「あふれる」は例えば「た走る」などとすると「音」がより生きてくることになります。「北窓を開くや辻の地蔵堂」薄暗い堂が一変に明るくなった感じがあります。 |
| 144 | 野仏の頬のふくよか風は冬 | 照夫 |
| 冷たい風の中での野仏の微笑んだ表情が窺えます。「風は冬」という言い方はいかにもこの作者らしいとは言えますが、私にはやや理屈めいているようにも。「凍て水に全身乗せる鳥滑る」「全身乗せる鳥滑る」は緩慢な印象です。 |
| 147 | お互ひに覚しき名挙げ遠雪嶺 | 涛子 |
| 遠雪嶺の名前を言い合っているのだろうか。「覚しき名」がよく分かりませんでした。「待春のサドルの埃ぬぐひけり」これからサイクリングに出発しようとしているのです。 |
| 152 | うつむけば解けしくつひも月朧 | 草多 |
| 上五中七の表現は良いです。ただ、「月朧」ね〜。靴紐という足元に焦点が絞られていますから、月はどうかな〜、とは感じました。もっとしっかりした季語はありそうです。「遥遥と碧き風の香春立ちぬ」季語が動かないでしょうか。どちらの句も纏まった作り方をなさっていて私などは勉強になりますが、全体に叙情的ではありますね。 |
| 159 | 雪吊の柱の穂先藁ポッチ | 汕山 |
| 「藁ポッチ」とは括られた藁のことでしょうか。句は何かを感じさせているのですが、このままでは分かりにくい感じです。「カセ鳥に願いを込めて水掛ける」「カセ鳥」とは山形県の火防行事のようです。行事自体が分かりませんが、句は何とか想像が出来ますね。 |
| 166 | 鳥羽殿の水潺潺と芹洗う | 宗太 |
| 鳥羽殿は白河・鳥羽・後白河3代上皇の院政の中心舞台となった離宮です。城南宮のあたりに建てられてあったようです。水がよくわかりませんが、そう言う名称の水があるのかも知れません。歴史を詠んでいますが今一理解を得るのは難しいかも。「鴨川の飛石渡る春の宵」体験かも知れませんが、かなり危険です。 |
| 172 | 籾殻の風紋白し冬棚田 | 湯煙 |
| 田圃に撒かれた籾殻が風紋のようなのです。「白し」が事実としても読み手にはぴんと来ないのと特に棚田である必要はないのでは。「年明けてタイムスリップ遷都祭」奈良の事と思いますが「タイムスリップ」はいりません。 |
| 175 | 人並みの暮らしになれて春をまつ | 月影 |
| 上五中七からご病気などのアクシデントに遭っておられたのかも知れません。第三者には分かりづらい面もありますが、作者にとって句は心底の実感なのでしょう。「太陽に大きく叫ぶ梅の花」梅の花をそう見立てたのですが、う〜ん、かなり無理があるかな〜。 |
| 176 | 梅が枝を バケツで売りし 梅どころ | あかまんま |
| 捉えているところはたいへん良いです。これをもし私だったら「梅が枝をバケツに活けて売つてをり」等と纏めるかも知れません。もう少しの絞り込みが必要。「福は内 端数三粒を 年の豆」これもここからですね。(間を開ける必要はありません) |
| 177 | 下顎が草臥れるなり牡丹鍋 | 風来 |
| 猪肉の固さに閉口している作者です。牡丹鍋の句としては異色。こういう句もあっていいと思います。「毛鉤捲く厚き眼鏡や春隣」上五中七は面白かったのですが、この季語、もっと良いのがありそうですよ。 |
| 178 | 春の日をちりばめ墓石磨きあぐ | 久敬 |
| 墓石屋さんの作業と思いますが、墓参りの事かも知れません。「ちりばめ」を推敲なさったら纏まるようにも。「白和えをこんもり盛って備前焼」「白和へ」だけで季語になりますか。そう言う歳時記あるのかな〜。 |
| 180 | 足袋型を採る客の五指展べ押さへ | 万年青 |
| 足袋は冬の季語ですが、足袋の制作を詠んだ句は珍しい。句はしっかりと表現されています。「献灯のケース揺るがす鬼やらひ」「ケース」がよく分かりません。そして何故「揺るがす」かも。 |
| 190 | 蜑の里曲がる路地ごと干し鰈 | 我見庵 |
| きちんと出来ている句です。ただ中七はまだ引き締められそう。私でしたら「どの路地も鰈を干せり蜑の里」と言った形にするかも知れません。「かぶきりのをさなのうなじかぜひかる」「かきぶり」関東地方の妖怪。ちょっと頭の作品という感じかな。 |
| 192 | 盛りあがる黄身の輝く寒卵 | 曉風 |
| 纏まってはいます。でも「盛りあがる」は平凡かな〜。「割り落とす」とも考えてみましたが、これもイマイチのような...。「行く雲や枯れ急ぎゐる雑木山」これも出来てはいます。 |
| 193 | 月月に雑草の花初暦 | やまめ |
| これは暦の写真ですか。毎月いろいろな雑草が撮られていると解しました。でもこれではわかりにくいです。それは「六甲に金環いまし春入日」にも言えます。まず「いまし」は「在す」と言う意味? |
| 198 | 俎板にあく残りけり蕗の薹 | はづき |
| 蕗の薹を料理しているところ。不用のあくが俎板に積まれてあるのです。「残りけり」をもっと的確に言えればもっと句はよくなるのですが。「読みさしの本なだれさう春炬燵」冬の時に積み上げられたのかも知れませんね。こちらもよい句です。 |
| 199 | ほろ苦き口いっぱいのフキノトウ | さつき |
| 確かにそうです。俳句的には「ほろ苦き」は「ほろ苦し」と終止形にして切った方がよいのでは。「新玉葱白さと緑を絵手紙に」意味はわかります。「絵手紙に白と緑の新玉葱」のほうがはっきりするかも知れませんね。 |
| 201 | 起伏なき話題に刺さるくさめかな | 水草 |
| 平凡な会話に突如嚔を誰かがした、と言うことでしょうか。「刺さる」が分かるような分からないような。ここらを一考すればおもしろい句にはなりそうです。「同い年なのに古ぶる懐手」この句も「古ぶる」がよくわかりません。 |
| 202 | 癒えし児を囲みて笑顔冬うらら | 樹氷 |
| 幼子がご家庭の中心なのです。安堵の笑顔に中に幼子がいるのでした。 「乳飲み子に点滴針の風邪無情」お気持ちはわかりますが「無情」までは言う必要はありません。そう読者に感じさせるのが俳句です。 |
| 205 | 浴槽に体折り曲げ氷雨聞く | ぶんこ |
| 氷雨は本来雹の関連季語で夏の季語です。ここでは雹ではなく凍ったような冷たい雨という意味で用いているのでしょう。中七は「どつぷり浸かり」とかいろいろ言えそうです。「雪解音の槌音めきて鍛冶の町」作者は音をそう感じ取ったのです。 |
| 206 | 白梅の影を流して神田川 | 海 |
| 「影を流して」は詩的な良い表現。まとまっている句です。「戯れて枝から枝え笹子かな」「戯れて」は作者の見方ですが、やや平凡な印象を持ちます。 |
| 207 | 首筋の今朝の予感が春の風邪 | 秋羅 |
| 春の風邪は今の状態で、上五中七はそれより数時間前の朝の出来事です。こんな感じ方よくありますね。でもこんな複雑なことを575に纏めるのは至難なこと。感心しました。「少女らのピアスの光日脚伸ぶ」きちんと出来ている句です。 |
| 214 | はんなりと絵皿に融けぬ雪うさぎ | 鶏児 |
| 「融けぬ」は「融けてしまった」と言うことですから、「はんなり」は生きていますでしょうか。素材としては大変面白いので更なる推敲を。 「子の覚え失せし母なり六花(りつか)舞ふ」解釈が見当外れだったら謝りますが、認知症の意味でしょうか。ちょっとわかりません。 |
| 218 | 山肌の形相変へしはだれ雪 | 洋梨 |
| 山の斜面のところごころに雪が残っていることで、従来の山の表情が変わってしまっているのです。しっかりした捉え方をしています。「春の潮鹿の足跡消して引く」厳島あたりかな。これも出来ています。 |
| 222 | 久闊の友と銀ぶら柳絮とぶ | 黒猫 |
| 事実をそのままきちんと纏めています。ここからどうするかなのですが....。「ゆっくりと育つ花菜や利根の空」「ゆつくりと育つ」がよくわからないのとあまり固有名詞が生きていないかな〜。 |
| 225 | しゃがむ子の手のひら囲む落葉焚 | やち坊主 |
| 落葉焚に子供らがしゃがんで火に手をかざしているところ。複雑なところをしっかりと写生がなされているところ、立派です。「春泥の追掛けてゆくランドセル」ランドセルの子の後から泥が跳ね上がっているのかな〜。中七は今ひとつ。 |
| 228 | 梅薫る天神さまに牛の像 | 楡 |
| 撫で牛のことですね。句は一応の形は出来ていますが、ここからどう踏み込むかです。「春浅きひそむか小鳥声わづか」まだばらばらです。ここから整理をしなければ行けません。 |
| 231 | 蕗のたう瑠璃の空より声のして | 泥亀 |
| 作者には声が聞こえたのです。これが詩です。やや、地面と空とで焦点がぼけているきらいもありますが、でも良い句ですね。まさしく春を感じさせています。「天水に荒波いくつ薄氷」「荒波」はどうでしょう。 |
| 232 | 寒月に 微かに笑う 仏たち | 十三 |
| 仏は仏像でしょうね。作者にはそのように感じられたのです。(間を開ける必要はありません) |
| 234 | 氷瀑祭竜宮城に迷ひしか | 秋桜 |
| 氷瀑祭は層雲峡が知られています。ライトに照らされて氷がいろいろな色となり幻想的な祭典のようですね。それを中七下五に集約しています。竜宮城は良いので、下五をもっと単純にまとめても、とは思いました。「地吹雪に閉ぢ込められてパン齧る」実体験でしょう。きちんと纏めています。 |
| 238 | カーテンに隠れてをりぬ狐かな | 卯平 |
| 本当の狐?。ゲームとも考えられますがそれでは季語になりませんのでホンモノでしょうね。「消ゆるまでついて行きけり冬の雲」作者が流雲に蹤いて行ったと言うことかな。2句とももひとつはっきりしないところがありますよ。 |
| 240 | 一枚の点字の賀状二十年 | カンナ |
| 長年に亘ってお目の悪い方との交流が続いているのです。突き詰めてゆくと「一枚」「二十年」は絶対に必要か、という見方も出てきますが、掲句には作者の素直で優しい心が籠もっています。これはこれでよい句だと思います。「盆梅の香る下車駅人まばら」下五に一工夫があってもよいような。 |

